個人的にすごく印象深かったのは、今までよく知らなかったこともあるが、グリーンランドに移住したヴァイキング5000人の全員消滅の悲劇。彼らは11世紀から15世紀にかけて450年にわたりグリーンランドでかなり高度な「文明」を維持し続けたのであるが、最後は全員餓死したらしい(最後は牛の蹄まで煮て食ったというのだから悲惨だ)。寒冷地には格段の適応力を発揮する北欧人ではあるが、彼らの滅亡の理由としてジャレド・ダイヤモンドは次の5点を挙げる:
著者は、この5点は、グリーンランドに限らず、すべての「文明崩壊」に部分的もしくは全面的に共通する問題だとする。あたかも人間の知恵で崩壊が避けられるかのように。確かにそういう面はある。同意。
- 意図しない資源枯渇(森林減少、土壌エロージョン)
- 気候変動(当時の地球寒冷化)
- 近隣敵対勢力の出現(寒冷化に伴いイヌイットが南下してきた)
- 友好勢力からの支援を受けられなかった(母国ノルウェーからあまりに遠かった)
- 保守的かつ頑迷。状況変化への対応姿勢に欠けていた(極寒地にも拘わらず、風俗習慣すべて、母国人以上に「ヨーロッパ的」であろうとした)
しかし、である。著者も本当は知っていると思うけれど(なぜなら所々で、あの悪名高きイギリス人経済学者の引用があるから)「文明崩壊」の本当の理由とは、人口過剰なのである。グリーンランドにせよ、たまたま移住をはじめたときに気候が温暖化していたから5000人も連れてやって来たのであるが(それだけの人数が食べて行けるだけの自然状況にあった)、寒冷化してしまうと「収納可能能力」が小さくなってしまったのだ。これはイースター島などのほかの例でも同じこと。最終的には、地球上ではあの悪名高イギリス人経済学者の「マルサスの原理」が貫徹するのである。
著者は比較的上手く行った例として江戸時代の日本を挙げているが、これも、人口の間引きや木材・食料資源取得を蝦夷地に広げることでアイヌ人の犠牲のもとに達成されたことも忘れないでちゃんと書いている。
現代日本も資源を海外から輸入することで、森林資源などの国内資源の温存に成功しているが、それがいつまで続くものなのか、興味深い。少なくとも野放図にマグロや鰻蒲焼きを食い散らして「ニッポン人が地球の資源を食い尽くしてしまった」などと後世の歴史家に書かれないようにしたいものである。
7 件のコメント:
先日来、簡潔な案内付きで投稿されている本の数々、わたしはまったく読んでいないのでとても興味深いです。わたし自身はミーハー族で軽い小説しか読まないので啓蒙されます。それにしても凄い読書量ですね。敬服しています。
どうも。最近外出できないのでもっぱらテレビを観るか本を読んでます。読んだのはメモしておかないとほかの本と混同してしまいますので備忘録です。関連して過去に読んだ本もついでにメモしますので、一見多いように見えますが、そんなこともないです。
人間は人間自身で、ある程度人口調整を行うようにプログラムされているのかもしれませんね。むしろ、一定の間隔で過ちを犯すことによって、生き残っているような気がします。それもホメオスタシスなのだと…
こんにちは。コメントがやり辛く設定されていたようでスミマセン。簡単にコメントできるように設定を直しておきました。
適正人口は何人ぐらいなのか、むつかしいですけど、中世では国民一人当たり所得と賃金が急増した時期はペスト蔓延の時期だけ。労働者にとっては人口が少ない方が断然有利なのですが、他人の稼ぎで生活している人たちにとっては逆に人口は多い方が有利。コンセンサス形成がむつかしい所以。
だから(人間が決められないから)、神様の出番なんでしょうね。
Unknown の投稿は【篠の風】でした。匿名で投稿するつもりはありませんでした。何かの手違いでしょう。
備忘録にしては簡潔にして明瞭な文章、お見事です。見習わなくては。
篠の風さんだったんですか。ブログをワードプレスに変更されたのですね。久しぶりに拝読。相変わらずの健康的なご生活ぶりとご健啖ぶりに敬服しました。さすがはドイツで日常に余裕があるみたいで羨ましいです。RSS登録しました。引き続きよろしく。
コメントを投稿